尊敬しているおじさんがいる。
私の母親の弟。
こんなエピソードがある
私が高校生の時、おじさんは真剣な面持ちで私を呼び出して言った
おじさん『おい、お前はお前のお母さんの血をひいてるから多分ろくなやつじゃない』
おじさん『特に異性関係でそのろくでもなさは発揮される気がする』
おじさん『いいか?男ってのは別れ際が大事なんだ。どうやって男らしく、なんの言い訳の余地も無く、気持ち良く嫌いになって貰って、それをひとり笑えるかが大事なんだ』
おじさん『厳しく振ってやるのも良いかもしれないけれど、若いときは突発的に命を絶つようなこともあるんだ。だからお前がちゃんと嫌われなさい』
おじさん『いいか?良い人だったなんて言われちゃだめだ!糞野郎になれ!大丈夫、女の子は強いから必ず立ち直る。女を舐めるなよ』
おじさん『今日はどんな女の子でも、必ずお前を嫌いになってくれる方法を伝授する』
私『はっ!』
おじさん『まず、女の子の家に行く』
おじさん『次にトイレを借りる』
おじさん『大っきい方をして、流さずに帰る』
私『・・・』
おじさん『これはなすごい魔法なんだ。そんなもん効果無いって思うだろ?違うんだぜ、これは人間の潜在意識にうんこを刷り込ませる魔法なんだ』
おじさん『1回目はまあそういうこともあるかな?って女の子も流してくれるだろう』
おじさん『2回目もまだ許してくれるかもしれない、だけど2回これをすると、もうデートの時に女の子は俺の顔がうんこに見えてくる』
おじさん『3回やれば完璧だ、これで嫌われなかったことは1度も無い』
おじさん『これは自分さえ傷つかなければ、誰も傷つかない最高の方法』
おじさん『もしも自分が傷ついたなら、それはお前の理解がまだ足りないんだよ。これは男の修行でもある。』
おじさん『いいか、良い人で別れたいなんてのは弱い男のいいわけなんだ。強い男はうんこを残せ!』
私はこの話を『レッツ糞野郎』と名付け記憶した。
いつも明るくて元気で、ものすごく短気ですぐ怒鳴るけどあったかい叔父さん。
病院が死ぬほど嫌いで、どんなに体調が悪くなっても絶対に病院に行かないって言い張って
いよいよ倒れて病院に担ぎ込まれたときには、もうそれなりの状態になっていた叔父さん。
日本に到着して、すぐに病院に向かった。
これが最後かもしれないな、と僕に言う。
そうだね、と返すと、馬鹿野郎あと20−30回は会うぞと手を握る。
これが最後かもしれないな、とまた僕に言う。
あと20−30回は会えるんじゃ無いかな?と返すと、馬鹿野郎これが最後と思えと手を握る。
手は想像してたよりもずっと熱くて、併発した肺炎の状態を思った。
叔父さんに『レッツ糞野郎』の話をする。
そんな話をしたなぁ、我ながらいつも良い話をするものだ、と嬉しそうに笑う。
お前胃瘻って知ってるか?と訊かれて
知らない、何ソレ?聞いたこともないよ。と返すと、やっぱりお前とは気が合うと、楽しそうに笑ってくれる。
帰り際これ持っていけ、とポチ袋をくれる。
何コレ?お小遣い?
僕はもう33歳だよ?お小遣いなんて貰えないよ、震災に寄付しろ。と言うと
あげたいんだ、お小遣いをあげたいんだ、と。
やめとけよ、もう、こんなお金大事に使わないよ。死ぬほどくだらないことに使うよ!と言うと
お前に死ぬほどくだらないことに使われる金を、俺はあげたいんだ、と。
本当にうちの家系は馬鹿ばっかり。そんでもって頑固で声がデカい。
最後に大事なことを教えてやる、という叔父さん。
いいか?体調が悪くなったら病院へ行け!と面白そうに笑う。
自分は全然病院に行かなかったじゃないか!と答えると
だろ?病院に行かないことを試して、やっぱり病院に行った方が良いって分かったんだ。お前は病院へいけよ、と笑う。
・・・しかし、お見舞いは切ないんですね。見舞う方はいつかは病室から帰らないといけない。
1人病室に残されるのはどんな気分なんだろうか。
なんだか胸一杯になってしまって、病室のトイレでうんこして流さずに帰るのを忘れてしまいました。
やられた!って言わせたかったな。僕はいつも詰めが甘い。
私の大好きな『レッツ糞野郎』の叔父さんのお話でした。
ありがとう、ごめんなさい。ありがとう。
わからないよ、ありがとう。
『死は救いとは良いながら、そうは悟りきれぬものである』
〜大佛次郎〜
『花に嵐の例えもあるさ。さよならだけが人生だ』
〜井伏鱒二〜
それは凄く扱いにくい物なんだけど、どんな状況でも、男の子が絶対に捨てちゃいけない武器って知ってるか?
『重い槍』だよ
〜私の大好きな叔父さん〜
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