弁当は物語だ

そこには語り手の技術と人生が込められている

大好きな小説家の物語は安心感がある

新作もきっと美味しい

今度はどんな展開で楽しませてくれるのだろう?

 

 

誰が作ったのか分からない物語は

出版社とあらすじで手を伸ばす

オリジン社のカラアゲ物語か・・・

どれどれ?つまらなかったら、もう2度と読まないからな

 

 

新人の小説家が『これ、一生懸命書いたんです。君に読んで貰いたくて』

と手渡す一冊はどうだろう?

 

語り手はドキドキしながら、蓋をあけられる瞬間を祈っている

どうか最後まで読んで貰える作品でありますように、と

 

 

滋賀に移住して4ヶ月

コロナが落ち着いてた時期は、あれこれと外食してみた

滋賀のラーメンはレベルが高い

スゴく美味しい創作和食の店があった

陽気と味に嬉しくなっちゃうイタリアンも見つけた

 

食欲が刺激され、家でも職場でもアレコレ食べ

見事にブクブク太った。

陽気なイタリアンの店で、常連から『ホリエモン』と呼ばれている

 

脳の渇望を癒やすためだけに『イライラした食べもの』もかなり選んでいたので

体調が崩れてくる

体調が崩れると集中力が下がるし

消化にエネルギーを使っちゃうから、惰眠が増える

 

 

このままだと病気になってしまうと思ったので、断食を行うことにした

徐々に食事量を減らし、本断食に入る

私の場合は、カロリーの無い水分しかとらない

自分を淡々と研いでいく

 

 

断食2日目に嫁ちゃんが『おにぎりを作ってくれませんか?』と、絞り出すように言った

彼女は7月から仕事を再開した。

朝は自分と赤子の準備で慌ただしい。しかも専門医試験のために夜遅くまで勉強している。

子に乳を分けながら、食事の準備はできないし、複雑なものは食べづらい。

 

絞り出すように声を出したのは

断食中でお腹が減っている人に、ご飯を作らせて良いのだろうか?と思ったのだろう

 

ご飯の匂いが空腹を刺激する

白米がいつもよりキラキラして見える

断食は本当に素晴らしい

日常のハリが変わる。世界が美しい

 

ゆかりのふりかけをご飯によく混ぜて

小さいキューブ状にしたチーズをそっと埋め込む

 

チーズは彼女の大好物

かぶりついたときに爆発する、工夫の火薬を仕込むのは楽しい

 

嫁ちゃんはことのほか喜んだ

 

断食4日目

体が軽くなり、集中力が戻ってくる。

睡眠も3時間とれば、スッキリ爽やか

3時に起きて、仕事に取りかかる

気がつくと5時を回っている、外はうっすら明るい

 
 
 

・・・物語を作ろう

ふと、思い立ち。台所に向かう

冷蔵庫に卵。卵焼きは弁当界の純文学

頭の中にプロットが浮かんでくる

タイトルが決まる

これは『卵焼きの出会い』弁当

 

卵を溶く、砂糖を多めに、塩は少なめ

3層に焼く。これは私の実家の味、甘い卵焼き

甘い卵焼きを頬張って、しょっぱいふりかけご飯で追いかける

口の中が天国になる。口福って言葉を考えた人間は天才だ

 
 

卵を溶く、塩コショウ少し、マヨネーズ少し

2層に焼く。一層目で薄いハムとモツァレラスライスチーズ

形状を維持するために、ハムを先に敷き、チーズを乗せる

丁寧に巻いていく、ハム・チーズは嫁ちゃんの大好物

 
 

甘い卵焼きを追いかけるご飯はしょっぱいと良い

チーズと明太の相性はマリアージュ

物語のオーソドックスな筋書きはずらしてはいけない

ご飯に明太ふりかけをまぶす。よくまぶす。全ては卵焼きのため

 
 

お肉はウインナー。だって私は物語の初心者

変化球で誤魔化さない。まっすぐ、ど真ん中に、全力

卵焼きとウインナーは長いことバッテリーを組んできた

辛いとき、もうダメになりそうなとき、必ず一緒に戦ってくれた

日本中の、各家庭の物語で。今日も彼らはキャッチボールをしているのだ

 
 

ご飯は2ヶ所に分けてみよう。片方にキューブ状のチーズをパラパラと

これで黄色い範囲が広がった。これは卵焼き弁当。

蓋を開けたとき『テーマの色』がパッと分かる方がいい

 
 

空いた隙間に合鴨のロースト黒コショウを入れる

嫁ちゃんがこっそり買って隠していたロースト

『あ!使いやがったな!』をサプライズに

 
 

お野菜は?

んなもん、夜に食べれば良いんです

で、完成。


スクリーンショット 2020-07-17 4.14.43




弁当作るのって楽しい

息子が大きくなったら、カバンに忍ばせてあげたいな

最後まで読んでもらえますように、と

 

 

 

 

『君がどんなものを食べているかを言って見給え。君がどんな人であるかを言ってみせよう』

〜サヴァラン〜

 

 

 

『食物の最上の調味料は飢えなり、飲物のそれは渇なり』

〜キケロ〜

 

 

 

『人(生き物)は身体の中に100人の名医を持っている。その100人の名医とは自然治癒力であり、 医師はそれを助ける手伝いをする』

〜ヒポクラテス〜

 

 

 

『みずから自分を励ませ』

〜釈迦〜

 

 

 

 

『生きる日のよろこび、悲しみ。一日一日が新しい彩りをもって息づいている。』

〜岡本太郎〜

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コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. dadacyamame
    • 2020年09月01日 16:33
    • 私も60歳過ぎてから、息子の弁当を作りました。
      40歳の子供なので、今は結婚して東京にいます。
      大した料理ではなかったのですが、喜んでくれました。
      大平さんはまず嫁ちゃんを喜ばしてから、次は子供を喜ばせる
      料理を作ってください。私の年代になってから、あの時は
      良かったと思えるはずです
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