『プロ旅行演出家の朝は早い①』

 

インドの首都ニューデリー

喧噪取り巻く商店街、コンノートプレイスの一画。

ここに大きな交差点がある。

プロ旅行演出家、匠の仕事場である。

 

世界でも有数の旅行演出家。

彼らの仕事は普段決して表舞台で語られることは無い。

 

我々は、プロ旅行演出家の一日を追った。

 

 001

 

街が夜闇に包まれ、遠くに仕入れを行う行商の、きしんだ車輪の音が小さく響く。

午前5

 

匠は既に布団から抜け出し、朝の日課であるお祈りを捧げていた。

 

——おはようございます」

 

「ヌ、ナマステ」(以下、日本語吹き替え)

「あ、おはようございます。」

 

Q.ずいぶん早いのですね

ええ、日課ですからね
 

低い声で短く答えてから、再び手を合わせ目をつむる。静かに一人の世界に入っていく匠。
祈る姿の美しさに我々は思わず息をのんだ。

 
 

それから30分後、お祈りを終えた匠に我々は再び接触を試みた。

——先ほどは大事な時間を邪魔してしまってすみません。

 
 

「いえいえ、そんなこと良いんですよ。」

我々は祈りを捧げているときとはまるで別人のような匠の笑顔に迎えられた。

 

Q.何を祈っていたのですか?

「ええ、今日も素敵な人に巡り会えて、最高の旅行の思い出を作れますようにって」

 

世界有数といわれるプロ旅行演出家になって久しい匠が、いまだに初心を忘れずに神に祈りを捧げていた。驕ることのないその姿勢がプロ中のプロといわれる証なのだろう。

 

Q.どうしてこんなに朝早くお祈りするのですか?

「だって、今日私が出会うかもしれない旅行者はまだ寐てるでしょ?

もしかしたら夢の中で宣伝できるかもしれないじゃないですか

 
 

匠はそういってはにかんだように笑った。夢にまで宣伝を・・

——匠のプロ意識が —光る

 

 

「さて、ちょっと水浴びをしてきます」

そういって匠は水シャワーを浴びに出かけた。

お湯は出ない、世界有数の旅行演出家といってもお湯の出る部屋に住めるものはまずいないという。喰っていくのがやっとの世界なのだと匠は笑う。

 

——では何故、旅行演出家を?

 

「やはり、良いことをしてお金を稼ぎたいんです。喜んで貰って、対価としてお金を貰う。そこが良いんです」

 

——しかし、それでは他の仕事も同じなのでは?

 

「違うんですよ。ほかの仕事は何か具体的なものを操作してお金を稼ぐでしょう?物を売ったり、料理を作ったり、金を貸したり。

違うんです、その瞬間というキャンバスサービスの絵の具を塗りつけることで、生の演出をする。

生の演出で私は喰っていきたいんですよ。

 
 

そう答える匠の目はまぶしい。


「色々大事なことはありますが、やはり身だしなみは大事です。必ず朝シャワーを浴びるんです。と、うん、洋服もしっかり乾いてるな。ちょっと離れてください、危ないですから



そう言うと匠は
 
 

バンバンババン 



乾いたばかりのシャツを地面に叩きつけた。


折角洗ったシャツにホコリが舞う。


 

——ちょっと何を?

我々は突然の匠の行動に驚きが隠しきれない。

 

「あぁ、これはね服を汚しているんです。あんまり綺麗な服だと逆にあやしくなっちゃうので、ちょっと汚れている方が舞台に映えるんですよ、バランスが難しいんですけれどね。

でも匂いが臭いのは、やっぱりお客様に失礼なので身体も服もしっかり洗うんです。」

 
 

これは長いプロ生活で学んだことだと言う。少しの妥協も許さない本物のプロの姿がそこにあった。


《続く》 


    プロ旅行演出家の朝は早い《2》
    プロ旅行演出家の朝は早い《3》
    プロ旅行演出家の朝は早い《4》
    プロ旅行演出家の朝は早い《5》
    プロ旅行演出家の朝は早い《完結》



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コメント

 コメント一覧 (2)

    • 1. よね
    • 2016年02月20日 16:43
    • これは面白い予感がするぞ!続きが楽しみだ。
    • 2. 太平
    • 2016年02月21日 14:14
    • >よね

      ありがとう^^
      面白いと嬉しいのだが実験なので、ドキドキです☆。
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